ローマ帝国が作った長城、その2(Hadrian's Wall)


 先にご紹介した Antonine Wall が作られる少し前に、現在のスコットランドとイングランドの国境近くに作られたのが、この長城です。築造を命じた当時のローマ帝国皇帝ハドリアヌスの名から、Hadrian's Wall と呼ばれています。厳密には、現イングランド国内にあって、当時その地を支配していたローマ帝国が、北方からのピクト人の侵入を防ぐ目的で作ったものです。



 こちらの長城は、Antonine Wall と違い、石造りの壁が設けられ、今でもその一部が残っています。同じ大きさに切り出された四角い石を使って作られた壁は、とても2000年近く前のものとは思われないくらい、しっかりとしています。長城は、ブリテン島の西の端から東の端まで、約80マイル(130km)にわたって作られました。元々の壁の高さは約4m、さらに壁の北側には幅8mの堀が掘られていました。さらに、一定間隔で、milecastleと呼ばれる砦も築かれていました。


延々と続く壁(左)と、砦の跡(右)

 ちなみに、ずっと後の時代の事ですが、1745年にスコットランドで起こったジャコバイトの乱平定の際に、当時の国王ジョージ2世はこの長城から石を取って、軍用道路の材料にしたそうです。



 現在、Hadrian's Wall にほぼ並行して、B6318という道路が通っています。場所によっては、この道路のすぐ脇に石壁を見ることができます。それだけではありません。驚いたことに、この道路の一部は、長城の真上に作られています。横に見える堀の跡までの距離から目算しても、明らかに壁の基礎の上を走っていることが分かります。この壁、一応世界遺産なんですけどねぇ。




   上の写真は、長城の北の方にあるイングランドとスコットランドの境界の道路沿いに建っている石です。この石の裏側には「England」と書かれています。この場所は大変見晴らしがよく、スコットランドの山並みを遠くまで望むことができます。

 
ここから北が、スコットランド、ボーダーズ地方



2004年9月27日