ローマ帝国が作った長城(Antonine Wall)


 2世紀の中頃、ブリテン島に侵入したローマ帝国の軍隊は、自分たちが占領した地域を北方の周辺民族(ピクト人)から守る目的で、長城を作りました。場所は、グラスゴーとエディンバラを結ぶ線のやや北寄りの所です。ここは、ちょうどブリテン島がくびれている所なので、比較的短い長城の建設で防衛線を構築することができます。それでも、クライド湾からフォース湾まで、約 60 km に及ぶ長城が建設されました。後の時代、この長城とほぼ並行する形で、クライド湾とフォース湾を結ぶ運河が作られたことからも、ここが東西の海岸線を結ぶ最短ルートで、かつ起伏の少ない所である、ということが分かります。



 建設から2000年近く経った現在でも、長城の一部は昔の面影をとどめています。当時の長城の高さは約 3 mで、その北側には、幅 12 m、深さ 3.6 mの堀が掘られていました。長城の方はかなり崩れているものの、堀ははっきりと残っています。実際、目の当たりにしてみると、かなり大きな構築物である事が分かります。また、Bonnybridge という町の近くには、長城に付属する砦の跡もあります。


Bonnybridge 付近の長城と堀



 ちなみに、Bonnybridge には、運河に架かる跳ね橋があります。船が通る時には、踏切の遮断機のような赤と白の縞模様の棒が降りて車の通行を止め、橋が跳ね上がります。
 私がここを訪れたのは真夏の暑い日だったこともあり、何人もの人たちがこの橋の欄干から運河に飛び込んだり、運河で泳いだりして楽しんでいました。




 また、グラスゴーの北西、Bearsden という住宅街の中に、長城に付属したトイレとお風呂の遺跡があります。

 



2003年8月23日